野田洋次郎×Takaが歌う「バイ・マイ・サイ」で熊本を応援しよう。
2016年の4月、熊本で大きな地震があった。発生から二週間たっても余震が続いていて、被災地はまだ危険な状態にあると報じられていた。遠くの街で暮らしていると、自分に何ができるのか分からないまま、時間だけが過ぎていく。
そんなとき、好きなバンドが動いた。RADWIMPSが、楽曲を配信してその収益の全額を被災地に寄付すると発表したのだ。支援の輪が広がる中で、音楽の形で参加するという選択肢を示してくれた。
この記事では、その曲を聴いた感想と、支援の仕組みがどうなっていたかを書いていく。直接被災地を訪ねた話ではない。遠くからできることを考えた、一人の記録だ。
発表を見たときのこと
知ったのは、バンドの告知だった。自分たちにできることはないかと考えた結果、楽曲による支援をすることにした、という趣旨の文章だった。被災された方々への言葉も添えられていて、急いで作ったのだろうと想像した。
芸能人が支援を表明する場面は、それまでも何度か見ていた。ただ、楽曲を配信して収益を全額寄付するという形は、当時の自分には新鮮だった。物を送るでもなく、義援金を募るでもなく、作品そのものを届ける。
曲の背景
もともとの曲は、十年ほど前に発表されたものだ。当時を知らない人にとっては、今回が初めて触れる機会になったかもしれない。古い曲が、別の目的で新しい聴き手に届く。そういうことが起きるのだと思った。
カップリング曲というのは、表題曲ほど注目されない。しかし長く聴かれ続けてきた曲でもある。今回選ばれたのは、そういう曲のほうが寄り添えると判断されたからではないかと、勝手に想像している。
曲は「バイ・マイ・サイ」
選ばれたのは「バイ・マイ・サイ」だった。2006年のシングル「セツナレンサ」のカップリング曲で、長く聴かれてきた曲だ。シングルの表題曲ではなく、あえてこの曲を選んだところに意味を感じた。
もともと静かな曲で、歌詞も情景が浮かぶ。だからこそ、傷ついた人のそばに置ける曲になったのだと思う。大きな音で励ますのではなく、隣で静かに歌うような曲だ。
届くまでの時間
告知から配信までの時間は、それほど長くなかったように思う。急いで準備したのだろう。支援は速さが大事な場面もある。気持ちが動いているうちに形にするという姿勢に、好感を持った。
買ってすぐ聴いたが、最初の数秒で曲だと分かった。特別に作り直したというより、元の曲の骨格を残したまま、声を重ねた印象だ。原曲を大切にしているのが伝わってきた。
Takaとの共演
今回は、別のバンドのボーカリストとの共演で歌われていた。二つ返事で快諾したという話を読み、そういう人がいるのだなと嬉しくなった。日本を代表する二つのバンドの声が重なる、というだけで特別な企画だ。
実際に聴くと、その期待は裏切られなかった。声の質が違うのに、重なると一つの歌になる。どちらかが目立つわけではなく、互いに譲り合っているような歌い方だった。
ギターと声だけの音
編成は、ギターとボーカルだけのシンプルなものだった。音数を足さないことで、声そのものが前に出る。余計な装飾がないぶん、歌詞がまっすぐ届いてくる。
この静けさが、当時の空気に合っていた。派手な音で元気づけるより、静かな音のほうが沁みる場面がある。聴き終わったあとに、しばらく黙ってしまうような曲だった。
歌詞の受け取り方
歌詞は、誰かを失うことや、それでも前に進むことが歌われている。震災の直後に聴くと、別の意味を持って聞こえる。同じ言葉でも、受け取る側の状況で意味が変わるのだと分かった。
特定の誰かに向けた歌ではないから、聴く人の数だけ解釈がある。だからこそ、多くの人に届いたのだと思う。説明的でない歌詞のほうが、傷ついた場所に入り込みやすい。
金額を自分で決められる
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| きっかけ | 2016年4月の熊本地震 | 余震が続く中での発表 |
| 曲 | 「バイ・マイ・サイ」 | 2006年シングルのカップリング |
| 編成 | ギターとボーカルだけ | 声がまっすぐ届く |
| 共演 | 別バンドのボーカルとのデュエット | 二つの声が重なる |
| 価格 | 購入者が金額を決められる | 10円から10万円まで |
| 収益 | 全額を被災地へ寄付 | 買うことが支援になる |
この企画でいちばん驚いたのが、価格の決め方だった。購入する側が金額を選べる。10円から10万円まで、自分で決めていい。この仕組みが、多くの人を参加させたのだと思う。
10円でも参加できる
お金に余裕がない人でも、参加できる。これが大きい。義援金というと、いくら包めばいいのか迷うし、少ない額では失礼ではないかと気にしてしまう。価格を自分で決められるなら、その迷いが消える。
学生だった自分は、多くを出せなかった。それでも、この曲を買うことで何かにつながっているという感覚があった。金額の大小より、行動したという事実のほうが、自分にとっては意味を持った。
余裕がある人は多く出せる
逆に、余裕のある人が多く出すこともできる。気持ちの分だけ金額に乗せられる。上限が10万円なのは、寄付という性質上、際限なくすると混乱するからだろう。それでも、通常の価格よりはるかに自由だ。
同じ曲を、違う金額で買う人がいる。その一人ひとりの判断が集まって、支援の額になる。仕組みとしては単純だが、参加している感覚は強い。買い物という行為が、そのまま寄付になる。
買い方の話
購入は配信サイトから行う形だった。特別な手続きはなく、金額を選んで、普段の曲を買うのと同じように決済する。寄付の窓口を探すより、はるかに手軽だった。
手軽さは、参加のしやすさに直結する。何かのついでにできることが、結果的に多くの人を動かす。支援の形としては、この手軽さが正解だったのだと思う。
遠くからできること
当時、自分は大阪に住んでいた。直接被災地を訪ねることはできなかったし、ボランティアに行く勇気もなかった。遠くから何ができるのかと、ずっと引っかかっていた。
そういうときに、好きなアーティストの曲を買うという形を示してもらえたのは、ありがたかった。何もしないより、確実に何かが動く。その実感があったから、後ろめたさが少し軽くなった。
音楽で支援するということ
直接被災地に行くことだけが支援ではない。お金を送る、物を送る、情報を広める。形はいくつもある。その中に、好きな音楽を買うという形があってもいい。
音楽は、役に立つものではない。食べることも、住む場所を作ることもできない。ただ、人の気持ちに触れることはできる。傷ついた人の心に、穏やかな時間が訪れるように、という願いが込められていた。
その願いが、寄付という形にもなっている。気持ちと実利の両方を兼ねた企画だった。どちらか一方では、ここまで広がらなかっただろう。曲がよかったから買われ、買われたから支援になった。
聴くときのことを考える
- 静かな場所で、音量を落として聴く。
- 歌詞を追わず、声だけを聴く。
- ギターの音が消える瞬間に耳を澄ます。
- 二つの声が重なる場所を探す。
- 聴き終わったあとに、少しだけ余韻を残す。
- 気になったら、支援の形を調べてみる。
イヤホンより、スピーカーで小さく流したほうがいい。部屋の空気ごと変わって、曲の静けさが際立つ。夜、明かりを落として聴くと、当時のことを思い出した。
この曲は、作業しながら流すより、一度きちんと座って聴いたほうがいい。歌い方の細かい変化が聴き取れると、同じ曲がもっと近くに感じられる。
時間がたってから
あれから時間がたった。震災の記憶は、遠くに住む者にとっては薄れていく。それでも、この曲を聴くと当時の空気が戻ってくる。何を考えていたか、何ができなかったかを思い出す。
当時の自分は、何か大きなことをしなければいけないと思っていた。実際には、できることは小さくて、続かないものばかりだった。それでも、曲を買うという行為は残った。手元に音が残るというのは、そういうことだ。
支援というのは、一度きりで終わるものではない。続けることは難しいが、忘れないことはできる。曲を聴くという行為が、その程度の役目を果たしてくれるなら、それも意味のあることだと思う。
まとめ
「バイ・マイ・サイ」を二人で歌うという企画は、静かな形の支援だった。値段を自分で決められ、収益が全額寄付される。仕組みは単純だが、参加する側にとっては大きな意味があった。
音楽が好きな人なら、こういう形の支援に出会うこともあるだろう。そのときは、金額を悩むより先に、まず聴いてみてほしい。聴いてよかったと思えたら、それが答えになる。
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